夜のヴィラには幻想的なルミナリエの神殿が夜空に映えてきた。
地上のあちこちに光のツリーがたち、天使が翼を輝かせている。
「メリークリスマス!」
あなたの顔を見て、家令はうれしそうに挨拶した。
「おいでくださってうれしいですよ。ご主人様。あなたの犬が寂しすぎてどうかなりはしないかと心配でした。この時期、ヴィラでもパーティやプレゼント交換などいろいろ催しものがございますので、どうぞお楽しみください」
それと、と家令は小さく苦笑をきざんだ。
「ヴィラのクリスマスはサトゥルナリアの意味ももちます。サトゥルナリアというのは古代ローマの収穫祭で、主人が奴隷の一年の苦労に報い、サービスするという習慣です。行儀のよかった犬のためにバシリカでパーティを開いています。犬のためのパーティですからご注意ください」
あなたが行きかけると、家令はまた呼び止めた。
「申し訳ありません。もうひとつだけ――定期的に花火が打ち上げられるのですが、その瞬間、明かりが消えます。その時は誰にキスしてもいいことになっています。ええ、ニューイヤーキスみたいなものです。犬やスタッフがキスしてきても、ほんの遊びですので、お気軽に受け流してくださいませ」
では、と家令はあなたを送り出した。
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